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過去の事故と対策(系譜)

 現在では当たり前となったルールや軌道構造が、何を契機につくられたのか、背景を知っていくことが大切です。対策を基にきっかけとなった事故を理解していきましょう。また、掲載する内容は基本的に国鉄時代(~1987年3月31日)のものとし、それ以降の事象も各事業者に展開しているものは掲載することとしています。

目次

一般軌道

安全側線の採用

  • 事故名:北陸線東岩瀬駅列車正面衝突事故
  • 発生日時:1913年10月17日 4時23分頃
  • 事故概況:北陸線東岩瀬駅で上り列車と行き違い予定の下り貨物列車がオーバーランし、本線上で停車、退行運転中の下り貨物に上り団体列車が衝突、24人以上が死亡、104人が負傷した。
  • 事故原因:上り列車が停止信号の見落とし又はブレーキ操作の遅れ。

複線区間の要注曲線に脱線防止ガードの設置、要注箇所にレール塗油器の設置、マヤ34形増備、著大狂いと平面性の制定、複合狂い整備標準

【軌道整備基準規程の丙修繕整備基準値】

【当時の複合狂いの対策】

  1. 適用範囲:運転速度45km/h以上の貨物列車を運転する線区
  2. 整備の対象とする狂い波形:「80m区間内に波高18㎜以上の複合狂いが4箇所以上存在する区間」「35㎜以上の複合狂い」
  3. 整備の時期:狂いを発見してから1ヶ月以内。ただし、「80m区間内に18㎜以上…」内に35㎜以上の複合狂いが存在する場合は、整備時期を早めること。
  • 事故名:東海道本線鶴見脱線事故
  • 発生日時:1963年11月9日 21時51分
  • 事故概況:東海道線鶴見~横浜駅間で、貨物線を走行中の下り貨物列車が競合脱線したところに隣接の東海道線を走行していた横須賀線の列車が上下方向から衝突、161人が死亡、120人が負傷した。
  • 事故原因:貨物列車の積荷や速度、線路線形などの複合的な要因。

軌間狂いの緊急整備値制定(軌道整備基準規程の丙修繕基準値)

  • 事故名:鹿児島本線列車脱線事故
  • 発生日時:1973年10月1日
  • 事故概況:鹿児島本線牛ノ浜~薩摩大川間において、部分的な軌間拡大により走行中車両が脱線した。
  • 事故原因:軌間拡大による軌間内脱線。

複合変位の管理(60mと30mは後に追加)

  • 事故名:鹿児島線阿久根~牛ノ浜間脱線事故
  • 発生日時:1975年7月14日
  • 事故概況:列車走行中、ブレーキが作用したため急停止し、確認したところ4両目が左側へ脱線していた。
  • 事故原因:通り変位と一部逆位相の水準変位があり、輪重が減少、同時に横圧が発生し、競合脱線した。

伸縮継目部の絶縁継目部の構造について(絶縁部は伸縮継目の受レール側に敷設、トングレールとレールブレスの間を0.5~1㎜に)

  • 事故名:東北本線レール折損
  • 発生日時:1977年6月21日
  • 事故概況:伸縮継目部の絶縁継目板が折損し、150㎜開口した。
  • 事故原因:-

10形レール締結装置の改良(2枚ばね化、ロックナットワッシャを不要とした等)

  • 事故名:山陰本線東松江構内脱線事故
  • 発生日時:1977年11月30日
  • 事故概況:山陰本線東松江構内において、10月5日に使用開始したばかりの新設線で、レールの小返りにより列車脱線事故が発生した。
  • 事故原因:新設線で締結ボルトが緩みやすかったこと、旧10形締結装置に使用したロックナットワッシャによりボルトの緩みが発見されにくかったことが影響し、締結ボルトが緩み板ばね先端が5㎜上がるとレールの横移動を押さえられなくなったため。

橋まくらぎフックボルトの整備(R≦1000mおよび主桁間隔が1.6m未満の橋梁において、溶接してあるフックボルトを全数交換等)

  • 事故名:長崎本線久保田~牛津駅間脱線事故
  • 発生日時:1981年6月7日
  • 事故概況:運転士が橋梁付近の進行方向左側レール2箇所の通り狂いを直前で発見し、緊急停止するも7両中6両が脱線、17人が負傷した。
  • 事故原因:R800の橋梁(L=7.3m)中のまくらぎ締結部が一部弛緩していたこと、レール高温により通り狂いが発生していたこと、それにより列車の異常横圧が発生していたこと、フックボルトの溶接部が破断していたこと等が挙げられる。

踏切ゴムシュートの挿入

  • 事故名:東北本線踏切溝挟まれ事故
  • 発生日時:1982年5月8日 18時15分頃
  • 事故概況:東北本線宇都宮~岡山駅間の踏切で、小学生が踏切内のレールの溝に足を挟み抜けなくなり列車と衝突した。
  • 事故原因:踏切フランジウェーが溝になっており、足を挟んだため。

遊間検査Cランク箇所の整正期限を6月中に

  • 事故名:中央本線鳥沢駅構内脱線事故
  • 発生日時:1982年5月28日
  • 事故概況:4月13日の遊間検査でCランクと判定(当日は気温28℃、レール48℃)、木まくらぎ区間、道床肩が延長15mに亘りかなり不足していた。
  • 事故原因:著大通り狂い(レール張り出し)による脱線。

酷暑期における道床作業規制

  • 事故名:石北本線留辺蘂(るべしべ)~相ノ内間脱線事故
  • 発生日時:1982年6月11日
  • 事故概況:特急列車の後部7両が脱線し、職員等25人が負傷した。
  • 事故原因:遊間整正が必要な箇所

ホーム離れの基本寸法を1,485㎜に

  • 事故名:車両ホーム接触事故
  • 発生日時:1986年11月
  • 事故概況:ダイヤ改正後、車両がホームに接触し、車両の塗装を傷つけた。
  • 事故原因:S40.9.30「建造物基本構造基準規程」で縮小車両限界に余裕50㎜を加え直線ホームの建築限界を1,475㎜と定めており、それを基本寸法とすると、通り狂いや笠石の変状に対する余裕がなかったため。

在来線におけるシェリングの判定基準と処置方法

  • 事故名:東北本線浦和~大宮間レール折損
  • 発生日時:1988年11月2日
  • 事故概況:レール折損により、輸送を混乱させた。
  • 事故原因:シェリング箇所の横裂が進展し、レール折損に至った。

軌道中心間隔の測定と管理

  • 事故名:常磐線勿来(なこそ)駅構内貨物列車接触事故
  • 発生日時:1989年11月10日
  • 事故概況:上下貨物列車どうしが接触し、それぞれ進行右側の列車暖房車側表示灯が破損した。
  • 事故原因:軌道中心間隔が不足していたため。

平面性の管理導入、推定脱線係数比の導入、R≦200mの曲線に脱線防止ガードの設置義務、推定脱線係数比が1.2を下回る曲線に脱線防止ガードの設置、レール研削形状の適正化

  • 事故名:営団地下鉄日比谷線列車脱線衝突事故
  • 発生日時:2000年3月8日 9時2分頃
  • 事故概況:地下鉄日比谷線の急曲線部において、列車の最後尾車両が乗り上がり脱線し、対向列車の側面に衝突、5人が死亡、63人が負傷した。
  • 事故原因:車両輪重のアンバランス、急曲線の低速走行、レール削正形状が適切でなかったことによる輪重減少や横圧増加により脱線係数が増大したため。

逸脱防止ガード敷設工事を着手(幹)

  • 事故名:新潟県中越地震新幹線脱線事故
  • 発生日時:2004年10月23日 17時56分頃
  • 事故概況:「新潟県中越地震(M6.8)」により、上越新幹線浦佐~長岡間で鉄道施設に被害が生じたことに加え、新幹線で営業運転中に初めて脱線事故(10両中8両)が発生した。負傷者はなし。
  • 事故原因:大きな地震を受けた際、車輪の上昇量がフランジ高さを超え、車輪とレール左右相対変位が限界を超えたことにより脱線した。

分岐器

S形ポイントリバーの開発

  • 事故名:総武線錦糸町構内脱線事故
  • 発生日時:1968年8月6日
  • 事故概況:総武線錦糸町駅構内において、大型機関車が37kg8番分岐器(おもり付のポイントリバー使用)を対向で逆行通過中にポイント部が開口しトングレールを抱き込み脱線した。
  • 事故原因:ポイントリバー(おもり付)使用分岐器において、大型機関車が逆行で対向運転する場合、車輪横圧によりトングレールが開口しやすく、トングレールを抱き込んだため。

ポイント用ガードレールの導入(基準線側R≦1000m)

  • 事故名:東北本線東十条構内脱線事故
  • 発生日時:1969年12月26日
  • 事故概況:東北本線東十条構内において、50N内方10番分岐器を対向で進入した際、基本レールおよびトングレールの摩耗は当時の保守限度内であったが、異線進入し脱線した。
  • 事故原因:基準線側の基本レールが側面摩耗し、後にトングレールが変形・水平摩耗した状態のところに直立摩耗した車輪が進入したため。

スイッチアジャスタロッドの離れ管理(離れ50㎜以上等)/脱落防止金具の標準化

  • 事故名:総武本線西船橋駅構内軌道短絡事象/山手貨物線恵比寿構内脱線事故
  • 発生日時:1970年1月19日/1974年
  • 事故概況:脱落防止金具が前方に飛び出しスイッチアジャスタロッドと接触、軌道回路の短絡により輸送障害が発生した。/転てつ棒ボルトの折損によりボルトナットが抜け落ち、連結板との接続が途切れ、トングレールの転換ができず、進入してきた列車が脱線した。脱落防止金具自体は1952年の函館本線落部駅構内の脱線転覆事故を契機に、1966年11月にNレール用(ウィットねじ使用)、1969年12月にNレール用(メートルねじ使用)を制定している。
  • 事故原因:メートルねじ化に伴い旧来のものより7㎜長い設計で、スイッチアジャスタロッドと接触しやすい状況であった。/転てつ棒ボルトが折損した際、抜け落ちてしまい、連結板との接続が途切れるため。

クロッシング交換基準の制定(累積通トン1.8億トンを標準に交換)、可動レールの構造改良(底部の窓部の大きさを改良)、分岐器細密検査周期の見直し(留意点を定め、年2回の解体検査と目視検査を実施)(幹)

  • 事故名:東海道新幹線岐阜羽島構内クロッシング損傷
  • 発生日時:1984年11月2日 0時15分
  • 事故概況:東海道新幹線岐阜羽島構内の分岐器(マンガン可動クロッシング)において、可動レールに底部横裂を発見するという事象が発生した。
  • 事故原因:可動レールは鋳造時に中空構造となっており、内部に鉄筋を配置しポリモルタルを充填し断面強化を図っているが、繰り返し荷重に対しては弱い構造であり、抜本的な抑止策もなかったため。

分岐器トングレールの摩耗管理(「新幹線細密検査要領(参考)」の「トングレール等のフローと損傷に対する補修要領」に準じて補修)

  • 事故名:京浜東北線蒲田駅構内脱線事故
  • 発生日時:1987年2月8日
  • 事故概況:蒲田駅構内において、入換え中の車両が脱線した。
  • 事故原因:トングレール先端部の摩耗(摩耗高と頭頂面幅のアンバランス)による脱線。

側線用分岐器前端ガードレールの導入

  • 事故名:阪和線日根野電車区構内脱線事故
  • 発生日時:1987年10月26日
  • 事故概況:阪和線日根野電車区構内において、381系車両が片開き8番側線用分岐器のポイント先端から対向で進入し脱線した。
  • 事故原因:速度の影響があり、特に381系車両の横圧が大きく、201形式分岐器のトングレール先端に入射角があること等が複合的に起因して脱線に至る。

事故防止

防護桁(防護工)の設置

  • 事故名:常磐線列車脱線転覆事故
  • 発生日時:1957年5月17日
  • 事故概況:常盤線大野~長塚駅間で下り列車の機関車と客車3両が脱線転覆し築堤下に転落、客車2両が脱線、3人が死亡、54人が負傷した。
  • 事故原因:トラックの積荷が橋桁に接触し線路にゆがみが生じたため。

踏切方向指示器の整備

  • 事故名:特急「かもめ」踏切脱線転覆事故
  • 発生日時:1958年8月14日
  • 事故概況:山陽線岩国~南岩国駅間で京都行き特急かもめが踏切でトラックと衝突、機関車と客車5両が脱線転覆、43人が負傷した。
  • 事故原因:警報機はあるが遮断機のない踏切で、直前の下り列車の通過による誤認でトラックが警報作動中に進入したため。

作業表示標の建植

  • 事故名:伯備線上石見~生山駅間触車死亡事故
  • 発生日時:1969年2月13日 14時18分
  • 事故概況:伯備線上石見~生山駅間で保線作業中に下り列車と触車、保線係員7人中6人が死亡した。
  • 事故原因:岡山地区の濃霧による下り列車の遅れに伴う行き違いが発生、上り列車が先発である旨の連絡を受け上りに対する見張員を配置、その後遅れが短縮したため所定に戻した下り列車が発車し配置した見張員と反対側から進来してきたため。

ホーム下の待避所や非常用ステップの設置の整備

  • 事故名:山手線新大久保駅ホーム転落事故
  • 発生日時:2001年1月26日
  • 事故概況:山手線新大久保駅で酔客1名がホームから線路に転落、救出のために線路に降りた2名が内回り電車と接触、3人が死亡した。
  • 事故原因:転落箇所が橋梁中で、待避場所がなかったため。

運転保安

風速計の設置・風速による運転規制

  • 事故名:東海道本線列車脱線事故
  • 発生日時:1934年9月21日
  • 事故概況:東海道本線草津~石山駅間の瀬田川橋梁で、徐行運転中の下り急行列車の客車11両のうち9両が脱線転覆し、11人が死亡、202人が負傷した。瀬田川への転落は免れた。
  • 事故原因:室戸台風の強風による。

降雨時における運転規制、災害警備基準の導入(河川増水時の水位基準の設定、沿線雨量計による判断)

  • 事故名:富良野線橋脚倒壊による脱線転覆事故
  • 発生日時:1968年10月1日
  • 事故概況:富良野線第1富良野川橋梁を貨物列車が通過中、河川増水による橋脚洗堀により倒壊、脱線転覆し、3人が死亡、3人が負傷した。
  • 事故原因:雨量による運転規制値や要注警備箇所は保線区毎に定められており、判断が属人的になっていた。

累積雨量(48時間以内総水量)による運転規制

  • 事故名:能登線急行列車脱線転落事故
  • 発生日時:1985年7月11日 14時21分頃
  • 事故概況:能登線古君~鴨川駅間で、急行列車が盛土崩壊で宙吊りになった線路に進入し脱線、3両が転落、7人が死亡、29人が負傷した。
  • 事故原因:粘土質の盛土で水抜工もなく、盛土内の水位が異常に上昇したため。

風速による運転規制の見直し(風速25m/s以上で運行停止)

  • 事故名:山陰線餘部鉄橋列車転落事故
  • 発生日時:1986年12月28日
  • 事故概況:山陰本線鎧~餘部駅間の餘部鉄橋を走行中、日本海からの突風により、お屋敷列車「みやび」の回送列車が転落し真下の食品工場に直撃、6人が死亡、6人が負傷した。
  • 事故原因:風速計の整備が不十分で風速の予測をしないまま運行していたこと。

(参考文献)

  • 鉄道構造物等維持管理標準(軌道編)の手引き

<画像引用元>

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