整備基準値、フランジウェー幅、高低差など分岐器の各種管理値の根拠についてまとめていきたいと思います。若手技術者はそれぞれ管理値について、計算根拠やどれほど安全度を持たせているか等を押さえておくと理解が深まるので、忘れた頃に覗きに来てください。
また、基本的には国鉄での管理値を基準とし、そこからJRや民鉄の各事業者へと広がっていったため、紹介できるものはJRや民鉄についても一部紹介したいと思います。
目次
共通編
①列車動揺管理値
一般区間編
軌道変位限度値
旧国鉄の鶴見事故技術調査委員会において、昭和42年頃に主要線区の高速軌道検測車を基に以下のとおり制定されている。
- 高低:±40㎜ → 調査結果で最大40㎜が存在したため(奥羽本線・信越本線)
- 通り:±36㎜ → 調査結果で最大36㎜が存在したため(常盤線)
- 平面性:±27㎜ → 緩和曲線部の分布で最大28㎜があり、逓減倍率300倍の場合27㎜が存在するため
- 軌間:+43㎜・-13㎜ → 昭和36年の主要線区の調査で直線・曲線部とも-12㎜が存在したため最小限度値を-13㎜としており、最大限度値は軌間内脱線を起こさない値として以下のとおり+43㎜としている(車輪をタイヤと表記するものもある)
- 複合:
ガードレール類
- 脱線防止ガードの敷設長:進入側5m、進出側50m → 進入側5mは固定軸距4.6mを誘導するため、進出側50mは過去の「脱線し停車するまでの走行距離」が30~40mであったことから若干の余裕を持ったため
分岐器区間編
①軌道狂い管理値
②トングレール食違い
③ポイント最小フランジウェー幅
④ポイントガード
⑤ガードレール下部限界
⑥クロッシング部フランジウェー幅・バックゲージ・軌間変位
(フランジウェー幅)
- 大正14年形:aC=46、aG=38
- Nレール用:aC=42、aG=42
- 高速走行用:aC=45、aG=42
- 60一般用:aC=42、aG=42
- 60高速用:aC=45、aG=42
- 新幹線用:aC=44、aG=41
(バックゲージの上限)
- 大正14年形、帽子形:988+46=1034 ≧ BGmax=1032
- Nレール用、50N側線用、60一般用:988+42=1030 ≧ BGmax=1030 ※余裕なし
- 50N高速用、60高速用:988+45=1033 ≧ BGmax=1030
- 40N新幹線:1358+42=1400 ≧ BGmax=1400 ※余裕なし
- 50N・60新幹線:1358+44=1402 ≧ BGmax=1400
(バックゲージの下限)
- 大正14年形、帽子形:BGmin ≧ 994/2+527-d 1024-4=1020(d=4)
- Nレール用、50N側線用、60用:BGmin ≧ 994/2+527-d 1024-2=1022(d=2)
- 高速走行(最高120km/h):BGmin ≧ 994/2+527-d 1024-1=1023(d=1)
- 新幹線用:BGmin ≧ 1363/2+714-d 1395.5-2.5=1393(d=2.5)
(軌間変位)
(凡例・パラメータ)
- 最小車輪内面間距離:988㎜、最小フランジ外面距離:516㎜
- 最大車輪内面間距離:994㎜、最大フランジ外面距離:527㎜
- d:ノーズレールへの当たり量(50PS:4㎜、50N:2㎜、高速用:1㎜、新幹線:2.5㎜)
(参考文献)
- 鉄道構造物等維持管理標準(軌道編)の手引き
- 分岐器の構造と保守―増補改訂版―
- 保線工学<上>
<画像引用元>
- 平成30年6月28日【運委参第43号】「軌間拡大による列車脱線事故の防止に係る意見について」運輸安全委員会
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