国土交通白書は、国土交通省が毎年6月ごろに公表している年次報告です。第I部がその年の特集、第II部「国土交通行政の動向」が各分野の施策の現状で、鉄道の記述は第II部の中の「交通ネットワーク」「安全・安心」「バリアフリー」「物流」「環境」「国際展開」などの章に分かれて載っています。
毎年読み比べると「去年まで書いてあった数字が変わった」「新しい項目が増えた」「消えた記述がある」といった動きが見えてきます。この記事では、令和3年版から令和7年版までの5冊について、鉄道に関係する部分だけを抜き出し、テーマごとに年版を横に並べて比較しました。鉄道設計技士の勉強で白書の動向を押さえたい方の、読む順番の目安にしてください。
- 対象:令和3年版(2021年6月)〜令和7年版(2025年6月)の第II部「国土交通行政の動向」。第I部の特集は含みません。
- 各年版は、おおむね前年度の施策を書いています(令和7年版なら令和6年度の実績)。
- 表の「R3」「R7」は年版を指します。数値・年月はすべて白書本文のまま。「同じ」は前の年版と同じ趣旨の記述です。
- 令和3・4年版と令和5年版以降で章立てが少し変わっている(第1章が「東日本大震災」から「時代の要請」に統合、ICTの章がDXの章に)ため、章番号ではなくテーマで対応付けています。各テーマの見出しに、令和7年版での章・節を添えました。
- 図表は画像のため、図の中の数値は対象外です。
1.整備新幹線・リニア・都市鉄道(第5章 第1節 交通ネットワークの整備)
| 項目 | R3(2021) | R4(2022) | R5(2023) | R6(2024) | R7(2025) |
|---|---|---|---|---|---|
| 整備新幹線の開業年限 | 九州(武雄温泉・長崎)令和4年秋頃、北陸(金沢・敦賀)令和5年度末(約1年の工期遅延が判明)、北海道(新函館北斗・札幌)令和12年度末を明記 | 3線とも「着実に整備を進める」に変わり、年限の記述が消える | 九州 令和4年9月開業を追記。北海道は令和4年12月の有識者会議で事業費が6,445億円増加との試算 | 北陸(金沢・敦賀)令和6年3月開業を追記。北海道は工事延長212kmの約8割がトンネル | 北海道は令和7年3月の有識者会議報告書で完成・開業は概ね令和20年度末頃の見込み |
| 青函トンネル共用走行区間 | 令和2年12月31日〜3年1月4日の5日間、営業運転で初の210km/h | 年末年始・GW・お盆時期に210km/h | 貨物列車の少ない特定時期に210km/h | 令和6年度より260km/h走行を実施予定 | 210km/h→260km/hに引上げ |
| 北陸(敦賀・新大阪) | 与党PTの「令和5年度当初着工」決議、着工5条件の早期解決 | 環境影響評価の手続き、施工上の課題の検討 | 施工上の課題を解決する調査を先行的・集中的に実施 | 同じ | 令和6年度に詳細な駅位置・ルート案を公表 |
| 中央新幹線(リニア) | 東京・名古屋約40分、東京・大阪約1時間、人口7千万人の都市圏。財政投融資3兆円で全線開業を最大8年前倒し | 同じ(「7千万人を超える」) | 同じ | 「日本中央回廊」の形成、東海道新幹線とのダブルネットワーク(リダンダンシー)に書き換え。名古屋・大阪間は令和5年に環境影響評価に着手 | 「最速令和19年」。名古屋・大阪間も含め全線開業に向け環境整備 |
| 都市鉄道(東京圏ほか) | 相鉄・東急直通線 令和4年度開業に向け | 相鉄・東急 令和5年3月開業に向け。令和3年7月答申「東京圏の地下鉄ネットワークのあり方」、東京メトロ完全民営化促進 | 相鉄・東急直通線 令和5年3月18日開業、福岡市地下鉄七隈線延伸 令和5年3月27日開業、有楽町線・南北線延伸の鉄道事業許可(令和4年3月28日)、芳賀・宇都宮LRT 令和5年8月開業予定 | 有楽町線・南北線延伸 工事施行認可 | 東京メトロ上場(令和6年10月)、大阪メトロ中央線 夢洲延伸開業(令和7年1月)、新空港線(矢口渡〜京急蒲田)の認定申請(令和7年1月) |
| 羽田空港アクセス | 羽田空港アクセス線 令和3年1月鉄道事業許可 | 京急引上線 令和4年3月鉄道施設変更認可、京急品川駅で線路増設・ホームドア設置 | 羽田アクセス線 令和5年3月工事施行認可 | 令和5年6月に本格着工 | 京急引上線の鉄道基盤施設整備に本格着工 |
| 通勤混雑 | コロナで緩和。分散乗車と鉄道運賃のあり方を検討 | 緩和 | 緩和された状態が続く | 同じ | 「混雑状況が戻りつつある」。時間的・空間的な分散・平準化の施策を検討 |
| 都市・地域総合交通戦略 策定都市数 | 114都市 | 114都市 | 121都市 | 130都市 | 129都市 |
変化のポイント
- 令和3年版には3線の開業年限が書かれていたのに、令和4年版で「着実に整備を進める」という表現に後退し、その後に九州(R5)・北陸(R6)の開業が順に追記されました。北海道は事業費の増加(R5)を経て、令和7年版で「概ね令和20年度末頃」と大きく後ろ倒しになっています。
- リニアの説明は「所要時間と人口」から、令和6年版以降「日本中央回廊」「東海道新幹線とのダブルネットワーク」という防災・冗長性の文脈に変わりました。
- 通勤混雑は4年間「コロナで緩和」でしたが、令和7年版で「戻りつつある」に転じました。
- 消えた記述:新大阪駅の結節機能強化の調査(R3のみ)、新幹線車両の無料Wi-Fi(R3「令和3年秋に完了予定」→R4「令和3年10月完了」→以降なし)。
2.地域鉄道・JR・鉄道事業の制度(第3章 地域活性化、第5章 第3節 産業の活性化)
| 項目 | R3 | R4 | R5 | R6 | R7 |
|---|---|---|---|---|---|
| JR各社 | JR北海道への監督命令(平成30年7月、JR会社法に基づく)、令和13年度の経営自立を目指す | 令和3年3月のJR会社法等改正(令和3年法律第17号)で支援期限を延長(経営安定基金の下支え、助成、出資、DES)。監督命令の記述は消える | 同じ(JR発足35年) | 同じ。コロナ後の利用者の行動変容を追記 | 同じ(JR発足37年) |
| ローカル線の再構築 | 改正地域公共交通活性化再生法で地域旅客運送サービス継続事業等を令和3年度に新設 | 国の主体的関与のもと、デジタル技術の導入等により再構築する具体的方策を検討 | JR只見線 令和4年10月1日全線運転再開(上下分離方式。平成30年7月の鉄道軌道整備法改正で黒字事業者の赤字路線も災害復旧補助の対象になり、全国初の適用) | 改正地域交通法の施行:ローカル鉄道の再構築の仕組み創設。JR芸備線の再構築協議会設置、鉄道事業再構築事業でJR城端線・氷見線など7件の実施計画を認定 | 「交通空白」の解消、地域交通のリ・デザイン全面展開 |
| 鉄道事業の現況(旅客輸送量) | 記述なし | 記述なし | 項を新設:令和2年度 約177億人(対前年度比約30%減)、約2,631億人キロ。事業者217社 | 令和3年度 約188億人、約2,901億人キロ。218社 | 令和4年度 約210億人、約3,528億人キロ。コロナ前の約8割程度まで回復 |
| 生産性向上・事業基盤強化 | 自動運転の導入検討、地方鉄道向け無線式列車制御システム、レーザーを活用した保守点検 | 同じ | VR空間上での軌道検査や工事・作業計画の支援システム | 屋根上検査の画像解析。担い手確保:収入原価算定要領の見直し(人件費)、特定技能制度による外国人材、動力車操縦者試験の年齢要件引下げ | 同じ(屋根上検査の「自動化」)。第9章に「鉄道分野におけるDXの推進」の項を新設 |
| 鉄道車両工業 生産金額 | 令和元年度 2,249億円(1,823両)、輸出11.6% | 令和2年度 2,286億円(1,784両)、輸出13.6% | 令和3年度 2,619億円(1,936両)、輸出14.4% | 令和4年度 2,542億円(1,798両)、輸出20.4% | 令和5年度 2,178億円(1,542両)、輸出17.6% |
| 利便性向上 | 駅ナンバリング、多言語化、交通系ICカードの全国相互利用(平成25年3月から10種類) | 同じ | 記述なし | ― | ― |
変化のポイント
- ローカル線は「方策を検討」(R4)→只見線の上下分離(R5)→改正地域交通法で芸備線の再構築協議会、城端線・氷見線など7件の認定(R6)と、検討から制度・実行へ進んだことが年版の並びで分かります。
- 令和5年版から旅客輸送量の項ができ、コロナからの回復が数値で追えるようになりました(約177億人→約188億人→約210億人)。
- 令和6年版で「担い手確保」(運賃への人件費反映、特定技能、動力車操縦者試験の年齢要件引下げ)が初登場し、令和7年版で鉄道のDXが独立した項になりました。
- 消えた記述:駅ナンバリング・交通系ICカードの説明、幹線鉄道等活性化事業による新駅設置支援(いずれもR5以降)。
3.踏切対策(第6章 第4節 交通分野における安全対策の強化)
| 項目 | R3 | R4 | R5 | R6 | R7 |
|---|---|---|---|---|---|
| 根拠となる計画 | 踏切道改良促進法+第10次交通安全基本計画 | 第11次交通安全基本計画 | 第11次 | 第11次 | 第11次 |
| 「開かずの踏切」の定義 | 列車の運行本数が多い時間帯において、踏切遮断時間が40分/時以上となる踏切(5年間同じ) | ||||
| 改良すべき踏切道の指定(新規指定数) | 令和2年度 51箇所(累計1,180箇所) | 令和3年度 156箇所 | 令和4年度 85箇所 | 令和5年度 408か所 | 令和6年度 117か所 |
| 災害時の管理方法を定めるべき踏切道の指定 | 令和3年度から新制度として予告 | 令和3年度 181箇所 | 令和4年度 191箇所 | 令和5年度 97か所 | 令和6年度 16か所 |
| 令和3年改正法の説明 | 改良が必要な踏切道を国土交通大臣が機動的に指定、踏切前後の滞留スペース、駅出入口の新設、バリアフリー化のための平滑化、災害時の管理方法、踏切安全通行カルテの更新・改良後の評価を詳しく記述 | 「改正された踏切道改良促進法に基づき」と簡略化 | ― | ― | ― |
| 踏切のバリアフリー | バリアフリー化のための平滑化 | ― | 視覚障害者の踏切内事故を受け、令和4年6月に「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」改訂 | 令和6年1月に同ガイドライン改定(踏切道内誘導表示の設置方法・構造を規定) | 特定道路等を優先した踏切道のバリアフリー対策 |
| 対策メニュー(新しく書かれたもの) | 災害時の遮断時間の情報共有 | 法指定を進め管理方法を策定、改良後の評価 | 踏切道のバリアフリー | 同じ | 第4種踏切道等の統廃合、車両進入抑制対策などの早期効果発現対策、狭小踏切・歩道のない踏切の拡幅、緊急輸送道路上の踏切の定期訓練・優先開放、第4種踏切道への簡易な歩行者安全設備 |
| カルテの名称 | 踏切安全通行カルテ | 同じ | 同じ | 同じ | 「踏切道安全通行カルテ」 |
変化のポイント
- 改良すべき踏切道の新規指定数は 51→156→85→408→117 と推移し、令和5年度(R6)の408か所が突出しています。災害時管理方法の指定は181→191→97→16と年々減っています。
- 令和3年版は改正法(令和3年)の内容を詳しく書いていますが、翌年版からは一文に簡略化されました。
- 令和5年版から視覚障害者の踏切内事故を受けたバリアフリー対策が登場し、令和6年版で誘導表示の規定、令和7年版で「特定道路等を優先」と具体化しています。
- 令和7年版で第4種踏切道の統廃合や簡易な安全設備など、対策メニューが大きく増えました。
4.ホームドア・駅の安全(第6章 第4節)
| 項目 | R3 | R4 | R5 | R6 | R7 |
|---|---|---|---|---|---|
| 旧目標(駅単位) | 令和2年度までに約800駅。元年度末 858駅 | 2年度末 943駅で目標達成 | ― | ― | ― |
| 新目標(番線単位) | 令和2年12月改正の基本方針:7年度までに3,000番線、うち1日10万人以上の駅で800番線 | 同じ | 同じ(交通政策基本計画 令和3年5月28日閣議決定) | 同じ | 同じ |
| 整備実績(番線) | ― | ― | 3年度末 2,337番線(うち10万人以上駅 406番線) | 4年度末 2,484番線(493番線) | 5年度末 2,647番線(559番線) |
| 鉄道駅バリアフリー料金制度 | ― | コラムで創設を紹介(令和3年12月) | 5年3月末 16社が届出 | 6年3月末 17社 | 7年3月末 17社 |
| ホームの転落対策(ハード・ソフト) | 内方線付き点状ブロック、車両ドア位置の不一致に対応した新しいタイプのホームドアの技術開発、駅員の声かけ | ホームドアのない駅での新技術を活用した視覚障害者の安全対策を検討 | 記述なし(料金制度と地方部重点化の記述に置き換わる) | 同じ | 同じ |
| 駅・車内の防犯 | 防犯カメラ増設、巡回警備、「危機管理レベル」の運用 | 令和3年10月31日の京王線車内傷害事件→同年12月3日対策取りまとめ。非常用設備表示の共通化、防犯設備の充実、手荷物検査の環境整備を検討 | 非常用設備表示共通化ガイドラインの運用、車内防犯カメラ設置の基準化を検討 | 令和5年10月に鉄道運輸規程等の改正省令が施行:新幹線や利用者の多い在来線の新造車両に車内防犯カメラ設置を義務付け | 同じ。2025年2月「鉄道テロへの対応ガイドライン」一部改正(大阪・関西万博に備えた危険品持込み規制の周知) |
変化のポイント
- ホームドアは駅単位の目標(約800駅)を令和4年版で「943駅・達成」と総括し、以降は番線単位の実績が毎年更新されています。目標3,000番線に対し、5年度末で2,647番線です。
- 財源は令和4年版のコラムで紹介された鉄道駅バリアフリー料金制度(令和3年12月創設)が転機で、届出は16社→17社。
- 新型ホームドアの技術開発など技術面の記述は令和3・4年版だけで、令和5年版以降は消えました。
- 車内の防犯は、京王線の事件(令和3年10月31日)を起点に「検討」(R4)→「基準化を検討」(R5)→「省令で新造車両に義務付け」(R6)と制度化が進みました。
5.移動等円滑化・バリアフリー(第6章 第1節 ユニバーサル社会の実現)
| 項目 | R3 | R4 | R5 | R6 | R7 |
|---|---|---|---|---|---|
| バリアフリー法の改正 | 令和2年5月改正法成立(心のバリアフリーなどソフト対策を強化)、3年4月全面施行に向け政省令を公布 | 令和3年4月に全面施行 | 改正内容を説明(国・地方公共団体・国民・施設設置管理者の適正利用の責務、公共交通事業者等の役務提供方法の遵守義務) | 改正への言及なし(法の基本的な枠組みのみ) | 同じ |
| 整備目標(基本方針) | 令和2年11月の最終とりまとめを受け、令和3年度から5年間の新目標で基本方針を改正(地方部の推進、聴覚・知的・精神・発達障害の見える化、心のバリアフリー) | 令和7年度までの新目標達成に向け(コラム) | ― | ― | 現行目標は令和7年度まで。8年度以降の新目標策定に向け、令和6年5月から検討会で議論を開始 |
| 公共交通事業者の義務 | 旅客施設の新設・大規模改良、車両の新規導入時の基準適合義務。既存は努力義務。平成30年改正によるハード・ソフト計画の作成・提出・公表 | 同じ | 同じ | 同じ(簡略化) | 同じ |
| 鉄道駅の財源 | ― | コラム「全国の鉄道駅におけるバリアフリー化の加速」:利用者の薄く広い負担による料金制度創設(令和3年12月)、地方部は補助率を最大1/3→最大1/2に拡充 | 料金制度 16社届出 | 17社 | 17社 |
| 精神障害者割引 | ― | ― | ― | 導入が進みつつある鉄道の精神障害者割引について、更なる導入を鉄道事業者に働きかけ | 令和7年4月にJR旅客会社・大手民鉄全社等で導入が実現 |
| 駅のトイレ・子育て設備 | ― | ― | ― | 駅構内の乳幼児用設備や子ども用トイレ等の設置促進、鉄道・バス車内のベビーカー用フリースペース(こどもまんなかまちづくり) | 同じ |
| 歩行空間 | 駅等を結ぶ道路・駅前広場の段差改善、誘導用ブロック | 同じ | 同じ | 「踏切道におけるバリアフリー対策」を追加 | 同じ |
| その他 | 東京2020大会関連駅のエレベーター・ホームドア支援、大会レガシーとしての共生社会 | ― | ― | G7三重・伊勢志摩交通大臣会合(令和5年6月)で「バリアフリー化の推進」を初めて主要テーマに | ― |
変化のポイント
- 法制度は「改正成立」(R3)→「全面施行」(R4)→「改正内容の説明」(R5)と流れ、令和6年版以降は改正への言及がなくなって平常の記述に戻りました。
- 基本方針の目標期間は「令和3年度からの5年間(7年度まで)」で一貫しており、令和7年版で次の目標(8年度以降)の検討開始が書かれました。次の年版で新目標の数値が載る可能性が高い部分です。
- 新しく登場したトピック:精神障害者割引(R6で働きかけ→R7で大手全社導入)、踏切道のバリアフリー(R6〜)、駅の子ども用トイレ・乳幼児用設備(R6〜)。
- 消えた記述:東京2020大会関連(R3のみ)、バリアフリー教室など心のバリアフリー施策の詳細(R3のみ)。
6.鉄道の安全・耐震・災害復旧・老朽化(第6章 第2節・第4節)
| 項目 | R3 | R4 | R5 | R6 | R7 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運輸安全マネジメント評価(鉄道) | 令和2年度 24者 | 3年度 23者 | 4年度 63者 | 5年度 44者 | 6年度 43者 |
| 運輸安全委員会の調査対象(鉄道) | 令和2年度 11件 | 3年度 15件 | 4年度 14件 | 5年度 15件 | 6年度 14件 |
| 主な事故事例 | 令和元年6月 横浜市の無人自動運転列車の逆走・衝突 | 令和2年6月 葛飾区の台車亀裂による脱線 | 令和3年10月 千葉県北西部地震による新交通システムの脱線(軌道経営者に勧告) | 令和4年3月 福島県沖地震による東北新幹線の脱線(6年3月報告書、輪軸の逸脱防止機能の高機能化を提言) | 令和5年6月 高知県の豪雨による土砂乗り上げ脱線(雨量規制の運用不備を指摘し勧告) |
| 耐震対策 | 主要駅・高架橋等の耐震対策を推進 | 同じ | 東北新幹線脱線を踏まえ検証委員会を設置(令和4年12月中間とりまとめ)。同種の高架橋柱は7年度までに前倒しで耐震補強 | 令和5年3月「特定鉄道等施設に係る耐震補強に関する省令」等を改正:新幹線は7年度、新幹線以外は9年度までに前倒し | 同じ |
| 防災・減災 | 3か年緊急対策(河川橋梁の流失、土砂流入、地下駅の浸水、落橋・桁ずれ)。令和2年12月の5か年加速化対策で予防保全型の老朽化対策を7年度まで集中実施 | 同じ | 5か年加速化対策の個別記述は消える。「適切な計画運休等の実施」を追加 | 同じ | 貨物鉄道ネットワークも含めた豪雨対策を追加 |
| 災害復旧の支援 | 鉄道軌道整備法の災害復旧事業費補助。コラム:令和3年1月末で7事業者11路線が運休。激甚災害で公的主体が施設を保有する場合は国1/2・地方1/2 | 本文のみ | 只見線のコラム(鉄道軌道整備法改正で黒字事業者の赤字路線も補助対象) | コラム:鉄道・運輸機構に「鉄道災害調査隊(RAIL-FORCE)」を創設、令和5年度は5事業者に派遣 | 本文のみ |
| 老朽化対策 | 橋りょう・トンネル等の法定耐用年数超過。地方鉄道の長寿命化改良を支援 | 同じ | 簡略化 | 同じ | 広域的・戦略的なインフラメンテナンスに向け、鉄道事業者の技術力向上、検査業務体制の再構築を追加 |
| 保安監査・青函トンネル・津波対策 | 計画的・臨時の保安監査、青函トンネルの変状対策への助成、津波対策の対応方針は5年間ほぼ同じ記述 | ||||
変化のポイント
- 耐震対策は令和3・4年版の一般論から、東北新幹線の脱線(令和4年3月)を境に、検証委員会(R5)→省令改正で「新幹線7年度・在来線等9年度まで」という期限付き(R6)へ具体化しました。
- 災害復旧の支援は、年版ごとに切り口が変わっています(国1/2・地方1/2の特例→只見線の上下分離→鉄道災害調査隊の創設)。
- 令和7年版で「貨物鉄道を含めた豪雨対策」「検査業務体制の再構築」が新しく書かれました。
7.貨物鉄道・物流(第5章 第2節 総合的・一体的な物流施策の推進)
| 項目 | R3 | R4 | R5 | R6 | R7 |
|---|---|---|---|---|---|
| 貨物鉄道の位置づけ | 産業物資輸送に大きな役割 | 同じ | カーボンニュートラルの達成やトラックドライバー不足の中で、環境に優しく効率の高い大量輸送手段として大きな役割が期待 | 同じ | 「ネット・ゼロの実現」に表現変更 |
| 施策 | 港湾・貨物駅等の結節点整備 | 同じ | 令和4年7月「今後の鉄道物流の在り方に関する検討会」提言、貨物駅の高度利用、貨物鉄道のスマート化 | 令和5年10月「物流革新緊急パッケージ」:鉄道(コンテナ貨物)・内航の輸送量・分担率を今後10年程度で倍増。2030年度にトラック輸送力が34%不足 | 令和6年11月「新たなモーダルシフトに向けた対応方策」(ダブル連結トラックや自動運転トラック等も総動員する「新モーダルシフト」) |
| 物流総合効率化法の認定件数 | ― | ― | ― | 406件(令和6年3月) | 543件(令和7年3月) |
| エコレールマーク(企業数) | 91社 | 95社 | 98社 | 100社 | 100社 |
| JR貨物の経営 | 上場可能な段階に至らず、助成・無利子貸付 | 「近年は経常黒字を計上しているものの災害等の影響を受けやすい」 | 同じ | 「経常黒字を計上している年度もあるものの」 | 同じ |
変化のポイント
- 令和3・4年版は結節点整備の一般論だけでしたが、2024年問題を背景に令和5年版から記述が厚くなり、令和6年版で「鉄道・内航を10年で倍増」という数値目標、令和7年版で「新モーダルシフト」が登場しました。
- 消えた記述:シベリア鉄道を利用した貨物輸送の実証事業(R3のみ)。
8.環境・DX・技術開発・海外展開(第7章〜第9章)
| 項目 | R3 | R4 | R5 | R6 | R7 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉄道の脱炭素(制度) | 燃料電池鉄道車両の開発推進、省エネ設備の導入支援 | 同じ | 令和4年3月「鉄道分野におけるカーボンニュートラル加速化検討会」立上げ、同年8月中間とりまとめ、5年5月最終とりまとめ。鉄道脱炭素官民連携プラットフォーム | 最終とりまとめを踏まえ推進。令和6年度税制改正でカーボンニュートラル投資促進税制の対象に鉄道車両を追加 | 同じ(税制の記述は消える) |
| 水素燃料電池鉄道車両 | 開発推進 | 同じ | 令和4年3月から営業路線で試験車両の実証試験 | 「水素燃料電池鉄道車両等の導入・普及に関する連絡会」設置 | 鉄道に関する技術基準に水素燃料電池鉄道車両の構造を策定 |
| 再生可能エネルギー | ― | 鉄道・軌道施設のインフラ空間を活用した太陽光発電 | 鉄道アセットを活用した再エネ導入拡大 | 同じ | 同じ |
| 鉄道騒音・CO2原単位 | 新幹線は昭和50年環境庁告示に基づく防音壁、在来線は平成7年通達に基づくロングレール化。鉄道のCO2排出原単位は航空機の1/5、自家用車の1/6(5年間同じ) | ||||
| 海外展開(アジア) | ベトナム ホーチミン1号線 令和2年10月に初の車両納入。インド高速鉄道 令和2年12月土木工事着工。ミャンマーの車両契約 | タイ バンコク都市鉄道レッドライン 令和3年11月開業。フィリピン南北通勤鉄道の第一編成到着。ミャンマーの記述は消える | ジャカルタMRT東西線の協力覚書、インドへ3,000億円の円借款 | インドへ第5期円借款4,000億円 | ジャカルタMRT南北線のE&Mパッケージを令和6年4月受注、ホーチミン1号線 令和6年12月開業 |
| 海外展開(欧米ほか) | 米国の高速鉄道、ロシアとの鉄道専門家会合 | 英国HS2 令和3年12月に日仏企業共同で車両受注、カイロ地下鉄4号線の車両契約。ロシアの記述は消える | ― | G7交通大臣会合で英国と鉄道協力 | ― |
| 国際標準化 | ISO/TC269議長、鉄道国際規格センター、交通安全環境研究所の鉄道認証室(5年間ほぼ同じ) | ||||
変化のポイント
- 脱炭素は、燃料電池車両の開発(R3・R4)→検討会と官民プラットフォーム(R5)→投資促進税制に鉄道車両追加(R6)→水素車両の技術基準策定(R7)と、制度が毎年積み上がっています。
- 海外案件は年ごとに主役が入れ替わります。ロシア・ミャンマーは令和4年版以降消え、インドの円借款、ジャカルタ、ホーチミンが続きました。
- 騒音と国際標準化の記述は5年間ほぼ同文です。
9.消えた記述の一覧
年版を追うと分かる「書かれなくなったこと」をまとめます。白書は前年度の施策を書くため、事業の完了や制度の定着で記述が落ちるのが基本です。
- 東京2020大会関連(関連駅のエレベーター・ホームドア支援、テロ対策):令和3年版のみ
- 新型コロナ対策(駅の衛生対策、ガイドライン):令和3・4年版のみ
- 新幹線車両の無料Wi-Fi:令和3年版「令和3年秋に完了予定」→令和4年版「令和3年10月完了」→以降なし
- 駅ナンバリング・交通系ICカードの全国相互利用:令和4年版まで
- 幹線鉄道等活性化事業による新駅設置支援:令和4年版まで
- 整備新幹線の開業年限(九州・北陸・北海道):令和3年版のみ。以降は開業実績として順次追記
- JR北海道への監督命令(平成30年7月):令和3年版のみ(JR会社法等改正の記述に置き換わる)
- 新しいタイプのホームドアの技術開発:令和3・4年版のみ
- 国土強靱化5か年加速化対策の鉄道分の個別記述:令和4年版まで
- シベリア鉄道の貨物輸送実証、ロシア・ミャンマーの海外案件:令和3年版のみ
- 東日本大震災からの鉄道復旧の詳細(常磐線 令和2年3月14日全線開通で全て復旧):令和3年版で総括、以降簡略化
10.5年分の変遷をどう読むか
5年分の鉄道関連の記述は、大きく「コロナからの回復」「人手不足への対応」「災害・地震対策の具体化」の3つの軸で動いています。
- コロナからの回復:通勤混雑は4年間「緩和」でしたが令和7年版で「戻りつつある」に転じ、旅客輸送量は令和4年度にコロナ前の約8割まで回復しました。
- 人手不足への対応:令和6年版の担い手確保策(運賃への人件費反映、特定技能、動力車操縦者試験の年齢要件引下げ)、令和7年版の鉄道DXの項の新設、貨物鉄道のモーダルシフトは、いずれも人手不足が背景です。
- 災害・地震対策の具体化:東北新幹線の脱線を契機に耐震補強の期限が省令で定められ、災害時の踏切管理、鉄道災害調査隊、豪雨対策と、災害関係の記述が毎年増えています。
一方で、整備新幹線のように「年限を明記→表現を後退→開業を追記」と動く項目や、ホームドア・踏切の指定数・輸送量のように毎年数値が更新される項目は、最新版の数値を確認しておくと安心です。バリアフリーの整備目標は令和7年度までなので、次の令和8年版では新目標の数値が載る見込みです。
出典・注意
国土交通省「国土交通白書」令和3年版〜令和7年版 第II部(HTML版)から鉄道に関する段落を抜粋して整理しました。各年版の本文は国土交通省の白書ページで読めます。図表の中の数値は含んでいません。記述の有無は本文のHTML版を基準にしており、PDF版の図表やコラムの一部とは差がある場合があります。正確な内容は必ず原文で確認してください。
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