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軌道構造の条件を知る~技術基準より~

 軌道構造(軌道材料の敷設)のルールや制限は沢山あります。さまざまな規程類に目を通し、覚えておく必要があります。しかし、若手技術者を見ていると、気付かないまま仕事を進めようとしている場面をよく目にします。加えて社内規程で定められているものは、各事業者内でさらに覚えるしかありませんが、最低限技術基準等で示されている内容について項目ごとに整理しておきます。

目次

カント

  • 在来線(狭軌):最大カントCm=105㎜、許容カント不足量Cd=70㎜
  • 在来線(標準軌):最大カントCm=150㎜、許容カント不足量Cd=90㎜
  • 新幹線:最大カントCm=200㎜、許容カント不足量Cd=90㎜
  • 外方分岐器:カントCm≦40㎜

  ※カントの計算方法についてはhttps://track-mainte.com/calculationを参照

曲線半径

  • 在来線(軌間0.762m以外):160m以上、分岐附帯曲線は100m以上
  • 在来線(軌間0.762m):100m以上、分岐附帯曲線は40m以上
  • 新幹線:400m以上、回送列車の分岐附帯曲線は200m以上

 ※分岐器の最小曲線半径は、細かく設定されているので別途参照されたい。

スラック

 ※上表のスラックの変遷に伴って、軌間変位量の限度値も変化しているので注意

緩和曲線長

【在来線】

  • 最大固定軸距が2.5m超:L≧400Cm
  • 最大固定軸距が2.5m以下:L≧300Cm

【新幹線】

  • 最高速度が200km/h未満:L≧300Cm
  • 最高速度が200km/h以上:L≧450Cm

   (凡例)L:緩和曲線長[m]、Cm:実カント[m]

 ※緩和曲線長の計算方法についてはhttps://track-mainte.com/calculationを参照

最急こう配

【在来線】

  • 機関車で牽引する列車を運転する線路:25‰
  • 上記以外の線路:35‰
  • 分岐器:25‰
  • 列車の停止区域:5‰(留置せず列車の発着に支障しない場合は10‰にできる)

【新幹線】

  • 走行区域:25‰
  • 地形上等やむを得ない場合:35‰
  • 停止区域:3‰

縦曲線

  • 在来線:半径2000mの縦曲線(R600m以下の曲線は半径3000mの縦曲線)

      ※こう配変化が10‰未満の箇所は挿入しないことができる

  • 新幹線:半径10000mの縦曲線(250km/h以下で運転する箇所は半径5000mの縦曲線)

車両限界と建築限界およびホーム限界

【在来線】

  • 車両限界の幅:3000㎜

 (建築限界の基礎限界)

  • 側方限界:3000㎜+400㎜×2=3800㎜
  • 上部限界:レール面上4300㎜、半径2150㎜

 (曲線における建築限界の拡大)

 (下部限界):フランジウェイを確保できる基準

  • フランジ接触箇所の深さ:37㎜
  • レール面との高さ:25㎜(乗越分岐器等は35㎜)
  • 通常のフランジ横方向:76㎜
  • 分岐器の横方向:65㎜(トング先端は100㎜、可動レール先端は80㎜)
  • ガード区間の横方向:38㎜+スラック
  • ガードありの踏切の横方向:44㎜+スラック

 (ホーム限界)

  • 軌道中心線からの離れ:1475㎜
  • 旅客ホームのレール面からの高さ:1100㎜(電車専用ホーム)、920㎜(その他列車もあり)
  • 貨物ホームのレール面からの高さ:1030㎜(有蓋貨車のみ)、960㎜(一般)
  • 曲線ホームの建築限界の拡大:K=W+S+C・h/g、K’=W-C・h/g

  ※K:線路の内軌側ホームの場合の拡大寸法[㎜]、K’:線路の外軌側ホームの場合の拡大寸法[㎜]、W:車両の曲線偏い量[㎜]、S:スラック[㎜]、C:カント[㎜]、h:ホーム高さ[㎜]、g:軌間[㎜]

【新幹線】

  • 車両限界の幅:3400㎜

 (建築限界の基礎限界)

  • 側方限界:3400㎜+500㎜×2=4400㎜
  • 上部限界(レール面上):一般7700㎜、トンネル・橋梁・乗降場等6450㎜

 (曲線における建築限界の拡大)

 (下部限界)

  • レール面との高さ:35㎜(分岐器は45㎜)

 (ホーム限界)

  • 軌道中心線との離れ:1.80m(通過列車あり)、1.76m(通過列車なし)
  • レール面からの高さ:1250㎜

施工基面幅

【在来線】

  • 盛土・切取区間:建築限界+0.6m以上(係員の作業又は待避等を行う側)
  • 曲線区間の拡大量:y=α・C
  • 高架橋等その他の構造の区間:2.75m以上
  • 無道床橋梁、トンネル等の待避所:50mごと(施工基面が確保できない場合)

  ※y:拡大寸法[㎜]、α:軌間ごとの係数(軌間762㎜:3.26、1067㎜:3.35、1372㎜:2.67、1435㎜:3.06)、C:実カント[㎜]

【新幹線】

  • 盛土・切取区間:3m以上
  • 曲線区間の拡大量:y=α・C
  • 高架橋等その他の構造の区間:2.75m以上
  • 待避等を行う側:3.5m以上

軌道中心間隔

【在来線】

  • 車両限界の幅:3000㎜

 (軌道中心間隔)

  • 直線:3000㎜+600㎜→3600㎜(旅客が窓から出ない車両:3400㎜)以上
  • 線間待避:3600㎜+700㎜→4300㎜以上
  • 曲線における拡大寸法:W=A+W1+W2
  • カント差による偏い量:A=|C1-C2|×3150/G
  • 曲線の偏い量はhttps://track-mainte.com/calculationを参照

  ※W:拡大寸法[㎜]、A:カント差による偏い量(同方向の場合)[㎜]、 W1:当該曲線の偏い量[㎜]、W2:隣接曲線の偏い量[㎜]、C1:当該線カント[㎜]、C2:隣接線カント[㎜]、G:軌間[㎜]

【新幹線】

  • 車両限界の幅:3400㎜

 (軌道中心間隔)

  • 直線:3400㎜+800㎜→4200㎜(160km/h以下で運転:4000㎜)以上
  • 曲線における拡大寸法:W=A+W1+W2(R≧2500は省略)
  • カント差による偏い量:A=|C1-C2|×4000/G
  • 曲線の偏い量はhttps://track-mainte.com/calculationを参照

  ※W:拡大寸法[㎜]、A:カント差による偏い量[㎜]、W1:当該曲線の偏い量[㎜]、W2:隣接曲線の偏い量[㎜]、C1:当該線カント[㎜]、C2:隣接線カント[㎜]、G:軌間[㎜]

軌道

 【ガードレール】

  • 脱線防止レール:下りこう配変更点及び連続下りこう配と急曲線の競合する区間等、事故多発箇所に設置。設置する場合は軌間内側の曲線内軌側。本線レールとの間隔は最大で85㎜。本線レールに対して、つとめて同種レール以上。まくらぎへの締結は、1本おきとすることができる。
  • 脱線防止ガード:敷設区間は基本的には脱線防止レールと同じ。推定脱線係数比が1.2を下回る曲線に設置。設置する場合は軌間内側の曲線内軌側。本線レールとの間隔は最大で85㎜。
  • 安全レール:脱線防止レール、ガードを設置すべき箇所で、かえって危険が生じる箇所(落石または積雪の多い箇所等)に設置する。本線レールとの間隔は180㎜(タイプレートを敷設した場合220㎜)。
  • 橋上ガードレール:軌間内方の両側に設置することが基本だが、降雪地域では軌間外方でも良い。本線レールとの間隔は180㎜(タイプレートを敷設した場合220㎜)。
  • 踏切ガード:本線レールとの間隔は65㎜(R<300mの場合75㎜)。
  • 摩耗防止ガード
  • ポイントガード

車止等

【安全側線】

  本線又は重要な側線が、平面交差又は分岐する箇所等において、相互に支障するおそれのある箇所に設けること。

【車止装置】

  軌道の終端等には、次の車止装置等を設けること。

 (砂利盛り)

  • 安全側線の終端
  • スイッチバック等の運転をする線の終端

 (レール製)

  • 行き止まりとなる本線路の終端
  • 重要な側線の終端

 (鋼製又はレール加工)

  • 車庫線及びこれに類する線路の終端(鋼製)
  • 前記以外の側線の終端(レール加工)

 (制走堤)

  • 建物、高築堤、切取等が設けられている場合で、列車又は車両が停止位置を誤れば重大な損害を及ぼすおそれがある箇所に設置。

 (油圧ダンパー式)

  • 行き止まりとなる本線路の終端において過走等があると重大な損害がある場合に設置。

【脱線転てつ器または車輪止め】

  • 側線で、地形上等のため安全側線を設置することが困難な箇所
  • 留置中の車両等の転動により危害を生じるおそれのある箇所
  • トラバーサまたは転車台に向かって車両が逸走するおそれのある箇所
  • 可動橋のある箇所

  ※車輪止めは、側線の車両接触限界の内方2mの箇所に設ける。

線路内立入防止

 人が線路に立ち入るおそれのある場所に、立入り防止のための防護設備として、「線路防護さく」や「立入り禁止等の危険表示」等を設置しなければならない。

避難用設備等

 事故が発生した場合等に旅客を安全に避難させるため、無道床橋梁(橋まくらぎ区間)においては、軌間内に繋材等を設置して歩行板を設けるか、橋側歩道を設ける必要がある。

線路標

 本線には、線路の保全及び列車の運転の安全の確保に必要な線路標を設けなければならない。

  • 車両接触限界標:俗に弁当箱と呼ばれるクリアランスを示すために建植。底面20cm角、上面10cm角、高さ10cmの白色。
  • 距離標:事業者により種類は異なるが、1km毎、500m毎、100m毎にキロポストを建植。
  • 曲線標:事業者により建植位置は異なるが、緩和曲線の始終端に逓減標を設ける場合もある。
  • こう配標:こう配変更点の位置に建植し、‰で表示する。

踏切道

【踏切道の舗装】

  • 敷板又は古まくらぎ:木造り
  • コンクリートブロック
  • アスファルト
  • コンクリート:DK式、平板ブロック、組立式、総研式
  • 連接軌道
  • その他:KG式、ストレール式、オムニ式、ボーダン式、簡易舗装、KF式

  ※連接軌道、ゴム製踏切道等車輪のフランジウェイが確保可能な踏切道はガードレールは不要。

【踏切道の長さ】

  踏切道の中心線に沿って測り、しゃ断機のない場合は外側軌道中心線から3m外方までの相互間、しゃ断機がある場合はしゃ断機相互間である。※事業者と道路管理者の用地境界の考え方とは異なるので注意

【踏切道の幅員】

  左右の路端間を踏切道の中心線に直角に測る。

【踏切道の交差角】

  鉄道中心線と道路中心線が交わる起点側の鋭角をいい、45度以上とする。


(参考文献)

 ・解説 鉄道に関する技術基準(土木編)第四版

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