工事設計・契約事務について学ぼう

保線作業

 軌道工事を設計し、請負会社と契約する際に必要な知識・ノウハウを整理しておきましょう。

1.工事設計において押さえておく法令

  • 労働安全衛生法:事故防止全般や重機使用時のルール等
  • 建設業法:工事請負契約全般
  • 廃棄物処理法:産廃にかける発生品のルール
  • 建設リサイクル法:リサイクルに回す発生品のルール
  • 鉄道事業法:鉄道事業法施行規則に基づく認定鉄道事業者制度
  • 鉄道営業法:鉄道に関する技術上の基準を定める省令(技術基準)
  • その他:民法や消防法、電波法、道路法、道路交通法、河川法など

2.公共工事標準請負契約約款 (以下、公共約款) の条項

 各鉄道事業者は、この「公共約款」を基に各元請会社と「基本契約」を締結し、それぞれの工事件名の契約の際に、この「基本契約」を追加・訂正するなどし、契約しているのではないでしょうか。また、それぞれ具体的な書面の様式や詳細な考え方については社内規程で定めているかと思います。

1 総則

  1. 第1条 総則:契約書類は、約款(契約書部分と第1条~第62条までの条項部分)と設計図書(図面、仕様書、現場説明書及びその質問回答書)からなり、請負契約は契約書類による。さらに、催告、請求、通知、報告、申出、承諾及び解除については書面によらなければならない。
  2. 第2条 関連工事の調整:受注者が施工する工事と発注者が発注する別の工事が施工上密接に関連する場合、発注者は関連工事を調整する義務があり、受注者は調整に協力しなければならない。保線工事としては、主に電気工事が関連工事に該当する場合が多い。
  3. 第3条 請負代金内訳書及び工程表:工事契約を締結した際は、受注者は発注者に対し請負代金内訳書と工程表を提出する。
  4. 第4条 契約の保証
  5. 第5条 権利義務の譲渡等
  6. 第6条 一括委任又は一括下請負の禁止:受注者は発注者から請負った工事を第三者(下請業者等)に一括して請負わしたり、委任してはいけない。
  7. 第7条 下請負人の通知:発注者は受注者に対し下請負人の名称、分担工事、技術者の内訳等、関する必要な事項を発注者に通知するよう請求することができる。また、原則として社会保険未加入の業者を下請負人としてはならない。
  8. 第8条 特許権等の使用

2 施工体制、施工管理に関する規定

  1. 第9条 監督員:発注者は工事現場に監督員を配置することができる。また、受注者に委任内容を通知して監督員に権限を委任することができる。
  2. 第10条 現場代理人及び主任技術者等:受注者は現場代理人、主任技術者又は監理技術者等を置き、氏名や必要事項を発注者に通知しなければならない。
  3. 第11条 履行報告:受注者は設計図書の定めにより発注者に履行方報告をしなければならない。
  4. 第12条 工事関係者に関する措置請求
  5. 第13条 工事材料の品質及び検査等:工事材料の品質については、原則として設計図書に定めるところによる。
  6. 第14条 監督員の立会い及び工事記録の整備等
  7. 第15条 支給材料及び貸与品:発注者が材料の支給又は建設機械器具の貸与を行う場合には、監督員が検査の上、引渡すこととする。
  8. 第16条 工事用地の確保等:工事用地等の確保については、発注者が工事の施工上必要とする日までに確保しなければならない。
  9. 第17条 設計図書不適合の場合の改造義務及び破壊検査等

3 条件変更、設計変更、工期、請負代金額等に関する規定

  1. 第18条 条件変更等:設計図書と工事現場の状態が異なる場合や設計図書の表示が不明確な場合等においては、受注者は発注者に対し、その旨を通知しなければならない。
  2. 第19条 設計図書の変更:発注者は必要があると認めるときは、設計図書を変更することができる。
  3. 第20条 工事の中止
  4. 第21条 著しく短い工期の禁止
  5. 第22条 受注者の請求による工期の延長:受注者は、天候不良や関連工事調整への協力等、受注者の責任ではない場合、工期延伸を請求できる。発注者に責任がある場合は、発注者が費用を負担しなければならない。
  6. 第23条 発注者の請求による工期の短縮等:特別な理由がある場合、発注者は工期を短縮することができる。
  7. 第24条 工期の変更方法
  8. 第25条 請負代金額の変更方法等
  9. 第26条 賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更

4 損害等に関する規定

  1. 第27条 臨機の措置
  2. 第28条 一般的損害
  3. 第29条 第三者に及ぼした損害
  4. 第30条 不可抗力による損害
  5. 第31条 請負代金額の変更に代える設計図書の変更

5 請負代金の支払方法等に関する規定

  1. 第32条 検査及び引渡し:受注者は工事が完成したときは発注者に通知するものとし、発注者は通知を受けた日から14日以内に完成検査をし、検査結果を受注者に通知しなければならない。
  2. 第33条 請負代金の支払い:受注者は完成検査に合格した後に請負代金の支払いを請求でき、発注者は請求を受けた日から40日以内に支払わなければならない。
  3. 第34条 部分使用
  4. 第35条 前金払及び中間前金払
  5. 第36条 保証契約の変更
  6. 第37条 前払金の使用等
  7. 第38条 部分払:受注者は出来形部分と工事材料について、部分払の請求を行うことができ、発注者はその出来形部分について検査を行う。
  8. 第39条 部分引渡し
  9. 第40条 債務負担行為に係る契約の特則
  10. 第41条 債務負担行為に係る契約の前金払〔及び中間前金払〕の特則
  11. 第42条 債務負担行為に係る契約の部分払の特則
  12. 第43条 第三者等による代理受領
  13. 第44条 前払金等の不払に対する工事中止

6 履行遅滞、契約不適合責任、解除等に関する規定

  1. 第45条 契約不適合責任
  2. 第46条 発注者の任意解除権
  3. 第47条 発注者の催告による解除権
  4. 第48条 発注者の催告によらない解除権
  5. 第49条 発注者の責めに帰すべき事由による場合の解除の制限
  6. 第50条 公共工事履行保証証券による保証の請求
  7. 第51条 受注者の催告による解除権
  8. 第52条 受注者の催告によらない解除権
  9. 第53条 受注者の責めに帰すべき事由による場合の解除の制限
  10. 第54条 解除に伴う措置
  11. 第55条 発注者の損害賠償請求等
  12. 第56条 受注者の損害賠償請求等
  13. 第57条 契約不適合責任期間等
  14. 第58条 火災保険等

7 紛争の解決等に関する規定

  1. 第59条 あっせん又は調停
  2. 第60条 仲裁

8 その他

  1. 第61条 情報通信の技術を利用する方法:第1条等の規定により書面により行わなければならないとされている催告、請求、通知、報告等については、電子メール等の情報通信技術の利用により行うことができる。
  2. 第62条 補則

※上記のうち、特に1項2項3項5項が実務に直結しますので、下記実務フローと照らし合わせながら理解しましょう。


3.工事検討(件名発議)から工事しゅん功・支払いまでの流れ

 「公共約款」に基づき各鉄道事業者が定めた工事請負契約に関する社内規程に則って請負会社と契約を取り交していると思いますが、以下に、その手順の一例を記述しておきます。

 凡例)発:発注者(鉄道事業者)、受:受注者(元請会社)

  1. )概算用の現地調査:工事を発議する前に工事の規模や現地の環境を確認し、概算を算出するための事前調査
  2. )工事件名の発議・請負会社の選定
  3. )工事設計用の現場調査
  4. )設計確認:鉄道施設の変更について、鉄道事業法施行規則第十六条に基づき、認可を受けるか、または第二十七条に基づき認定事務所の場合は簡略化された手続により設計確認を工事立案前に行う。
  5. )工事立案:工事の内容(準拠する規程や工種、工事数量、工事材料、略図等)を整理し、
  6. )見積通知:建設業法施行令第六条に基づき、見積期間を工事一件の予定価格が500万円未満の場合は1日以上、500万円以上5000万円未満の場合は10日以上、5000万円以上の場合は15日以上とすることとし、やむを得ない場合は5日以内に限り短縮することができる。この政令を基に、社内規程で政令以上の見積期間を設定している場合もある。
  7. )価格協議→合意:発注者の積算書に基づく基準価格と受注者の見積書を手元に、契約責任者どうしが価格について協議し、請負金額を決定する。
  8. )注文書:発注者が価格協議で合意した決定金額を注文書を受注者へ提出する。
  9. )注文請書:受注者は注文書を承諾する場合、請書として発注者へ提出する。
  10. )監督員の指定:上記第9条のとおり。契約締結後に通知する。
  11. )廃棄物処理計画書の提出:環境省における建設廃棄物処理指針の“2 廃棄物処理の基本事項”の解説の「元請業者は廃棄物の処理方法等を記載した廃棄物処理計画書を作業所ごとに作成し、発注者の要求に応じて提出すること。」に基づき、元請業者(=受注者)は発注者に廃棄物処理計画書を提出する。
  12. )工事工程表の提出、工事等従事者の通知:上記第3条、7条、10条のとおり。
  13. )リサイクルの届出:建設リサイクル法第十条に基づき、特定建設資材(コンクリート、木材、アスコン)が発生する請負代金500万円以上(税込)の工事については、工事着手の7日前までに都道府県知事に届け出なければならない。届け出る場所は、特定建設資材が発生する所在地を管轄する市町村か指定の事務所となっている。
  14. )事故防止検討会などの開催:当該工事の施工体制や工事内容、施工方法等を図面や現地写真を活用し、工事等従事者へ共有、注意事項等を洗い出し議論する。
  15. )工事着手の届出(工事着手)
  16. )日々の実績報告:上記第11条のとおり。
  17. )産廃処理→マニフェストの写しの提出:施工に伴い発生した産業廃棄物を元請業者(=排出事業者)の処理の責任の下、処理を行う。下請業者に運搬させる場合は収集運搬業の許可を取得し、元請業者と委託契約を締結する必要がある。
  18. )廃棄物処理報告書の提出:環境省における建設廃棄物処理指針の“2 廃棄物処理の基本事項”の解説の「廃棄物処理の結果を発注者に報告すること。」に基づき、元請業者(=受注者)は発注者に廃棄物処理報告書を提出する。
  19. )工事しゅん功の届出(工事しゅん功):上記第32条のとおり。
  20. )しゅん功検査→合格:上記第32条のとおり。
  21. )しゅん功検査結果の通知:上記第32条のとおり。
  22. )請求書の提出:上記第33条のとおり。
  23. )支払い:上記第33条のとおり。
  24. )再資源化等報告:建設リサイクル法第十八条に基づき、元請業者は再資源化報告が完了したときは、発注者に書面で報告しなければならない。

※互いに届け出を受けた場合は、受理(受付)をするという行為が必要である。


4.設計確認(上記フロー4項)

 鉄道施設の変更については、鉄道事業法施行規則に以下のとおり規定されている。

  • 第十六条:鉄道施設の変更の認可申請
  • 第十七条:鉄道施設の変更の届出
  • 第二十七条:一般認定鉄道事業者の鉄道施設に係る簡略化された手続
  • 第二十七条の二:特定認定鉄道事業者の鉄道施設に係る簡略化された手続
  • 第二十七条の三:急傾斜地崩壊危険区域内における制限行為に係る簡略化された手続

①一般認定鉄道事業者における簡略化された手続で可能な変更

②一般認定鉄道事業者における認可が必要な変更

  1. 鉄道の種類の変更
  2. 停車場間にわたる本線の増設
  3. 動力の電気への変更並びに電気を動力とする鉄道にあつては、電気方式及び電車線の標準電圧の変更
  4. 軌間の変更(普通鉄道に限る。)
  5. 駅の新設又は移設
  6. 長さ一キロメートル以上にわたる軌道中心線の変更
  7. 本線の高架式構造及び地下式構造への変更

③特定認定鉄道事業者における簡略化された手続で可能な変更

④特定認定鉄道事業者における認可が必要な変更


5.工事積算(上記フロー6項)

 一般財団法人建設物価調査会「国土交通省土木工事積算基準」に基づき、

 国土交通省「公共工事設計労務単価(令和3年3月~)」によると、労務単価の東京都の場合は以下のとおりです。

  • 特殊作業員:24,700円
  • 普通作業員:21,600円
  • 運転手(特殊):24,600円
  • 土木一般世話役:25,500円
  • 軌道工:46,700円


6.リサイクル届・再資源化等報告(上記フロー13項・24項)

 建設リサイクル法に基づき、工事1件※1につき税込で請負金額500万円※2を超え、特定建設資材(コンクリート、木材、アスコン)を廃棄する場合は工事着手※3の7日前までに都道府県知事に届け出なければならない。また、処分後は元請が発注者に再資源化等報告を行わなければならない。

 ※1:工事1件とは、単価契約工事など工期を四半期や三半期等で分割する場合は、その分割の工期毎の請負金額で判断し、必要であれば届け出る。

 ※2:請負金額500万円以上(税込)とあるが、届け出る工事の規模で判断するため、単価契約工事の場合、1所在地で500万円以上が条件となるので、保線工事で当てはまる可能性は低い。また、工事着手前の早い段階で届け出る場合もあり、500万円以上となるかどうか明確でない場合に、後に未届けとならないためにも念のため届け出ておく、という方法もある。さらに、この請負金額は材料費も含むため注意が必要である。→建設リサイクル法 質疑応答集(案)Q27、Q43

 ※3:契約工期の着手から起算するのではなく、実際の解体等の工事を着手する日から起算して良い。→建設リサイクル法 質疑応答集(案)Q51

①リサイクル届

②再資源化等報告


7.産廃処理(上記フロー11項・17項・18項)

 廃棄物処理法に基づき、元請業者が排出事業者として産業廃棄物を自ら処理または処理を委託しなければならない。

①廃棄物の分類

 廃棄物は以下のとおり分類されている。通常の建設発生土は、基本的に再使用することとしており、廃棄物としないことが一般的とされているため、誤解のないようにされたい。また、保線工事による主な発生材料を列挙しておきます。

  • 廃プラ:軌道パッド、締結装置ばね受台、締結装置ゲージブロック、踏切護輪ラバー、連軌樹脂ブロック、踏切緩衝材(樹脂製)、合成まくらぎ
  • コンがら:PCまくらぎ、基礎ブロック、踏切舗装ブロック
  • アスがら:アスファルト舗装
  • 木くず:木まくらぎ、踏切添木・縁木
  • 廃油:保守用車燃料

②建設廃棄物処理委託契約

 排出事業者(=元請業者)が建設廃棄物の収集運搬や処分を委託する場合は、以下の様式を用いて委託契約を取り交しておく必要がある。収集運搬は下請業者に、処分は産廃処理業者に、という別々の業者になる場合もあり、それぞれ同じ契約書に捺印して回る必要があることから、2週間程度の日数を要すので工事契約時には留意しておく必要がある。

③産業廃棄物収集運搬業許可

 収集運搬しようとする者は、収集元・運搬先それぞれの都道府県知事に許可を得る必要がある。5年という有効期限があるため期限切れに注意する。

 収集運搬する運搬車の両側面に、下記のように表示しなければならない。

④産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付

↓紙マニフェストの例


8.語句の説明

  • 一般認定:
  • 役務(えきむ):工事とは異なり、調査や試験、測量、設計、図面作成などの業務をいう。
  • 間接費:間接的に要する費用で、共通仮設費や現場管理費、一般管理費等のこと。
  • 工事原価:一般管理費を除いた直接工事費、共通仮設費、現場管理費を合わせた費用のこと。
  • 処理:産業廃棄物処理の『処理』とは「分別」「保管」「収集」「運搬」「処分」をいう。
  • 成果物:受注者が発注者に提出する出来高を示した図面や計算書のこと。成果品ともいう。
  • 代人(だいにん):現場代理人のこと。社長等、請負者の代理人として工事現場の責任者となる。
  • 直接工事費:労務費や材料費、機械損料等のこと。
  • 特定認定:
  • 人工(にんく):一般に歩掛のこと。狭義では歩掛のうち、分子の人の方を指す。
  • 歩掛(ぶがかり):単位数量当たりの必要な作業人員。人工と同意であるが、狭義では積算標準等で定められたものを指すことが多い。例:5人で10㎡の場合→5人/10㎡=0.5人/㎡
  • 元請(もとうけ):発注者から直接工事を請負った業者のこと。その元請業者から部分的施工を請負うことを下請という。

(参考文献)

  • 公共工事標準請負契約約款 中央建設業審議会
  • 改訂5版 公共工事標準請負契約約款の解説 建設業法研究会 編著
  • 建設現場従事者のための産業廃棄物等取扱ルール 改訂4版 (公財)産業廃棄物処理事業振興財団
  • 図解 土木施工用語集 四訂版 稲橋俊一 福地喜明 村上生而 編著
  • 公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター https://www.jwnet.or.jp/jwnet/about/compare/index.html

<画像引用元>

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