若手技術者の中には、特に保線作業が外注化され直接作業に触れたくても触れる機会が少なく、どのように作業が行われているか知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか?今回は、レール輸送車から数百メートルのロングレールを線路脇へ卸す「ロングレール取卸」を解説します。
目次
取卸作業の全体像
ロングレール取卸は、地上班(卸されるレールを受け止め、位置を整える)と車上班(輸送車上で締結装置の解除やワイヤーの操作を行う)の連携作業です。輸送車を最徐行させながら、車端からレールを繰り出して低ローラーの上に卸していきます。前回解説した準備作業(受台・低ローラーの仮設)が済んでいることが前提です。
地上班の手順
- アンカーをレール底部に設置し、スパナで緊締する ※インピーダンスボンドがある場合は、マット・山形鋼・半コロで防護する
- ワイヤーをアンカーに引っ掛ける
- 受台の位置に2人が付き、バールを取卸中のレールに引っ掛けて低ローラーへ誘導する ※バールを掛けるのは、レールが半分程度の高さまで下りてから。レール同士の連結部は変則的に下りるので注意
- 四頭くぎを低ローラー内側の穴に挿していく
- レール後端部が下りる直前に、タイヤをまくらぎ鼻端部に千鳥(交互)に置く ※後端部ははねるため、最後の受台には付かず離れる
- レール後端部がタイヤ上に下りたら、山越器で上げてタイヤをてっ去する ※低ローラーに乗っていないレールがあれば山越器で上げ、バールで直す
- (2本以上卸す場合)連結部の金具は、レールをバールで押して手で外す
- スパナでアンカーのナットを緩めて外す
- レール両端に杭を打ち込み、ロープでレールとくくって転動を防止する
- ワイヤーを小さく丸めて輸送車へ片付け、軽便トロ・山越器・タイヤ類を撤収する
- 次工程(交換)の準備として、山越器を据える位置に印を付け、足用の半コロを間配っておく
- 限界測定器で限界確認・跡確認を行う
車上班(レール締結の解除担当)の手順
輸送車の中央部で、レールを固定している締結装置を操作盤とハンドルで解除していく役割です。
- 発電機を始動し、操作盤の照明を入れる
- ロックナットを少し緩め、ストッパーボルトをいっぱいまで緩めてから、ロックナットを手で締め直す
- 現場に近付いたら、操作盤の横方向の締結を緩めるボタンをランプが点灯するまで長押しする
- 左右の押え当て金を手で取り外す
- 縦方向の締結を緩めるボタンを長押しし、縦締結棒ハンドルをいっぱいまで回して緩める
- 押え梁のロックを外し、梁を長手方向に回して固定する
- 取卸すレール側のスペーサとダミーレールを手で外へ移動させる
- 輸送車を前進させ、レールを取卸す
- 取卸後は、スペーサ・ダミーレール・当て金を収納し、縦・横の締結を逆の手順で締め直す
- 発電機に燃料を補充し、照明を切って終了する
車上班(車端のワイヤー・シュート担当)の手順
- ワイヤーの目をレール端のフックに引っ掛け、ピンを挿し込む ※ハンマーで叩き入れる
- ワイヤーの反対側を引き出し、指定されたシュートの上に置いておく
- 現地に到着したら、シュートピンを抜いてシュートを下ろし、スライド操作用バルブで取卸す位置に合わせる
- アンカー位置を越えて停車し、ワイヤーをアンカーに接続する ※ワイヤーがもつれたり、シュートから外れたりしないよう注意
- 最徐行(2km/h程度)でレールを引き出し、シュートに差し掛かったらローラーを通過するようバールで介添えする
- レールが降り出したら5km/h程度に上げる ※2本以上の場合、レール接続部は左右に振れるので注意
- 残り10m程度で停車し、地上班へタイヤ設置を指示、再び最徐行で降ろし切る
- 降ろし終えたらシュートを上げてピンを挿し、バルブを格納位置に戻す
- 器具の員数確認・燃料補給を行って終了する
安全のポイントと現場のコツ
- 下りてくるレールに正対しない。バールを掛けるのはレールが下がってきてから。連結部や後端部は変則的な動きをします。
- 速度の使い分け。引き出し始めと降ろし終わりは最徐行、安定したら速度を上げる。地上班との連絡が命綱です。
- 卸したレールは杭とロープで転動防止。最後に限界確認・跡確認で締めます。
用語ミニ解説
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 地上班/車上班 | 線路側で受ける班と、レール輸送車上で操作する班 |
| アンカー | レールを引き出すためにレール底部へ取り付ける金具 |
| シュート | 輸送車の車端でレールを滑り降ろすための案内装置 |
| 低ローラー | 卸したレールを縦送りするための背の低いコロ |
| インピーダンスボンド | 信号電流に関わる線路脇の機器。取卸時は防護が必要 |
| 千鳥(ちどり) | 交互にジグザグへ配置すること |
まとめ
ロングレール取卸は「動いているレール」を扱う、緊張感の高い作業です。地上班・車上班・運転側の連絡を密にし、決められた速度と手順を守ることが安全の絶対条件です。
次の記事では「9.ロングレール交換準備編」を解説する予定です。
▼シリーズ「保線作業について学ぶ」を順番に読む
前:保線作業について学ぶ(7.ロングレール取卸準備編)
次:保線作業について学ぶ(9.ロングレール交換準備編)
シリーズ目次:保線作業について学ぶ(全30回まとめ)
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