若手技術者の中には、特に保線作業が外注化され直接作業に触れたくても触れる機会が少なく、どのように作業が行われているか知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか?今回は、ロングレール交換の当夜に現場で行う「実作業の流れ」を解説します。4番の記事では工法と設定替の考え方を扱いましたが、今回は山越器を使った標準的な交換体制と、交換機を使う大規模施工の2つを紹介します。
山越器方式の手順
- 所定間隔で置かれた照明をセットし、指示された方向へ点灯させていく
- 溶接業者が交換位置をガス切断し、緊張器のホースを接続してシリンダー以外をセットしておく
- ボルト緊解機で交換レール箇所+外側2組の締結装置を緩解し、手で外す ※外した締結装置は、新旧レールの仮置きを支障しないよう同じ列に並べて置く
- 新パッドとコロを間配り、新パッドのまくらぎ面側にボンドを付けていく
- 旧レールの印の箇所に山越器とキャッチをセットし、ガス切断後に旧レールを吊って指定の箇所へ送る
- 新パッドをまくらぎ上の所定位置に置いていく ※コロとガイドローラーの位置にはパッドを置かず、まくらぎ中央にコロ、新レールの裏にガイドローラーを取り付ける
- 新レールに山越器とキャッチを掛けて所定の位置に置き、必要に応じて縦移動する ※旧レールが支障する場合は、この段階で半コロ+低ローラーをてっ去する
- 旧レールを25m置きにガス切断し、山越器2台で縦移動させ、仮置きは100mm以上の間隔でハの字に置き、レールフォークで倒す。旧パッドは剥がして固めて置く
- 緊張器をセットする ※新レールを当て切りする場合は、付近の山越器は吊り上げたままにして、溶接用に通りを合わせられるようにしておく
- 受台に使っていた半コロ・低ローラー・くぎ類を軌間内に回収していく
- 前後の緊張器へ同時に圧力をかけるのは難しいため、まず中央部を10m程度締結する(中央締結)
- 端部の設定替として、緊張器内の締結装置を緩解し、ステップ方式でトン数をかけながら外側へ緩解・PC油付けを進める(要領は設定替と同じ)
- 交換レールの中央付近から新レールの通りを確認し、必要があればバールで調整する
- 締結装置を取り付けて手で軽く締めておき、コロを抜き取り、パッド位置の悪い箇所は吊上げ器でレールを上げて直す
- 交換レール中央付近から締結装置を緊締し、設定替箇所も両外側から緊締していく
- 水準器で軌間を測定し、仕上り基準値を超える箇所はボックススパナで調節する
- 受台があった側の道床をウマでかき上げ、サラエでケレンし、ランマーで締め固める
- 不要器具・旧パッドを搬出し、点検ハンマーで打音確認。緩んだ締結装置は締め直し、効かなくなった締結装置は印を付けて共有する
- 事後検測・限界確認・跡確認を行う
交換機方式(大規模施工)の概要
延長が長い場合は、レール交換機と軌陸バックホウを使う方式もあります。流れは以下の通りです。
- 締結装置を緩解・回収し、軌道パッドを交換しておく
- 軌陸バックホウを載線し、交換機を当該線上に配置。山越器で新旧レールを交換機に載せてワイヤーで固定する
- 軌陸バックホウで交換機をけん引しながら、バールで旧レールの送り出し・新レールの位置合わせを行う
- 旧レールを25m(50m)単位でガス切断していき、交換が済んだら交換機をてっ去する
- 絶縁継目(IJ)がある場合は、チルホール等で位置を微調整し、スコヤで確認する
- 締結装置を取り付け、パッド直しを行い、しわ取りの緊張(例:10t)をかけて通りを確認後、当て切りで溶接する
- 締結装置を緊締し、水準器で軌間を確認しながら仕上げ、事後検測・限界確認・跡確認を行う
目次
安全のポイントと現場のコツ
- 外した締結装置は「同じ列に並べる」。散らかすと復旧時に部品が足りない・向きが違うなどのトラブルになります。
- 中央締結→端部設定替の順。前後同時に緊張をかけられないため、まず中央を固定してから両端をステップで処理します。
- 効かない締結装置は必ず印を付けて共有。次回の作業や検査で対処できるようにしておきます。
用語ミニ解説
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 山越器 | レールを吊り上げて横移動させる保線用の器具 |
| 軌陸バックホウ | 道路と線路の両方を走れるバックホウ(ショベル系建設機械) |
| レール交換機 | レールを載せてけん引し、連続的に交換するための台車 |
| IJ(絶縁継目) | 信号回路を区切るための絶縁された継目 |
| 中央締結 | 交換レールの中央部を先に締結して固定すること |
| しわ取り | レールの微小なたわみを緊張器で伸ばして整えること |
まとめ
ロングレール交換の当夜は、切断→入替→縦送り→緊張→締結→検測が一連で流れます。器具の配置と役割分担が事前に決まっているほど、現場は静かに、速く進みます。
次の記事では「12.レール交換跡作業・発生レール運搬編」を解説する予定です。
▼シリーズ「保線作業について学ぶ」を順番に読む
前:保線作業について学ぶ(10.レール二次溶接(GPW)編)
次:保線作業について学ぶ(12.レール交換跡作業・発生レール運搬編)
シリーズ目次:保線作業について学ぶ(全30回まとめ)
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